

【昔ながらの銭湯に行ってみた・おわり】小慣れたかっこいい自分はいなかった
「銭湯は初めて?」 帰り際、おかみさんに聞かれた。 湯上りに倒れた私を、本当に心配している顔だった。 「実は初めてです」と言う、最後のチャンス。 なのに私は、この後に及んでも「いえいえ。あ、でもここは初めてですけど」と嘘をついた。...


【昔ながらの銭湯に行ってみた・その5】湯上りに倒れて、女の世界を感じる
10円分のドライヤーが終わらないうちに、目の前がぐらんと揺れた。 首の後ろがキーンと冷たくなっていく。湯あたりだ。 すぐに息もできなくなって、くず折れてしまった。 風呂上りのご婦人たちが、自分の家のように座布団を出す。 パンツ姿の私に、かけつけたおかみさんがバスタオルを何枚...


【昔ながらの銭湯に行ってみた・その4】常連の輪の中で、ひとり心細くなる
おそらく、そういう時間帯だったのだと思う。 まだ空が明るいうちに、銭湯に来てしまった。 会社帰りのサラリーマンも、学生も、親子連れもいない。 風呂なしアパートに住んでいそうな、バンドマンも劇団員も。 せめて18時を過ぎないと、お風呂には来ないのだろう。...


【昔ながらの銭湯に行ってみた・その3】素直に初めてと言えなくて
番頭さんは女の人だった。 風呂上りのおじさんたちといっしょに、テレビを見ている。 番台の前に突っ立った私を見て、「460円だよ」と笑った。 これは、コンビニで言われる「460円になります」と同じ意味じゃない。 「こういう銭湯はね、460円なんだよ」というガイドをしてくれたと...


【昔ながらの銭湯に行ってみた・その2】ワンダーランドに感じる道とそうじゃない道
銭湯は歩いていかなきゃ、と思った。 昔ながらの銭湯は、電車にのって行くところじゃない気がする。 カラコロと下駄を鳴らして、洗面器を持って、ちょいとそこまで・・・が粋だ。 どっちも持っていないので、サンダルだけつっかけた。 インターネットで見つけた銭湯は、うちから30分。...


【昔ながらの銭湯に行ってみた・その1】お付き合いにすっかり疲れて
前の日は、ことわれない飲み会だった。 知らない人ばかりを、もてなす飲み会。 何度やってみても、どうしてもどうしても、苦手である。 ぜったいこれっきり会わないだろうな、と思う人。 本当はそういう人に、自分の話なんてしたくない。...


【ピーターラビット展に行ってきた・おまけ】bunkamura内で1000円ランチ
渋谷の街になじみがあるならいい。 どこでお昼を食べようか、うろうろしなくてすむ。 もう少し落ち着いた場所ならそれも面白いと思うけれど、ここは別だ。 真夏の渋谷。絶対にうろうろしたくない。 30歳を越えてから、ますますここは知らない街になった。...


【ピーターラビット展に行ってきた・その4】グッズ売り場は熱狂の渦
グッズ売り場は、たくさんの雑貨で溢れかえっていた。 さすが、キャラクター界のハリウッドスター。 もうそこは、熱狂、熱狂、熱狂の渦である。 ここまでの展示で、みんなの心はすっかりピーターラビット一色なのだ。 私なんて、絵を見てる時からすでに、なにを買おうか考えていた。...


【ピーターラビット展に行ってきた・その3】ポターさんの描いた緑道の風景が、とても素敵で驚いた。
ポターさんの絵は、手のひらほどのサイズだった。 ピーターラビットの原画も、すごく小さい。 ちょこんとした額に入れられて、お行儀よく壁に並んでいる。 まん丸くて大きなおしり。 ぽってりした短い手足。 ぴくぴくと動いていそうな口もと。 あたたかくて柔らかそうなお腹。...


【ピーターラビット展に行ってきた・その2】ピーターって飼い兎だったのか!
最初の絵で、早くも衝撃を受けた。 むっくりとした毛並みの兎が、むぎゅっと体を丸めている。 「ピーターの素描」というデッサンである。 ピーターラビットって、飼い兎だったのか! 当然のように、妄想の生き物だと思っていた。 「うさぎとかめ」のうさぎと、同じような感じだと思っていた...