【昔ながらの銭湯に行ってみた・その5】湯上りに倒れて、女の世界を感じる
- kinako152 .
- 2016年8月27日
- 読了時間: 2分

10円分のドライヤーが終わらないうちに、目の前がぐらんと揺れた。
首の後ろがキーンと冷たくなっていく。湯あたりだ。
すぐに息もできなくなって、くず折れてしまった。
風呂上りのご婦人たちが、自分の家のように座布団を出す。
パンツ姿の私に、かけつけたおかみさんがバスタオルを何枚も掛ける。
「慣れてないのに調子にのってるからだよ」
ひとり、意地悪なことを大きな声で言う人がいた。
さっきお風呂で、にこやかに話しかけてくれた人の声だった。
「でもこの人そんなに長湯してないよ。わたしはずっと見てたよ。」
こう繰り返してくれたのは、浴場で私を1番じろじろ見ていた人だ。
そうだそうだー!もっと言ってー!と、心の中で立ち上がる。
私が40代か50代だったら、あの人は意地悪を言わないんじゃないか。
自分よりずっと若い女が、こうして弱々しくしているのがカチンとくるのだ。
それは、32歳の私にも覚えがあるから、なんかわかる。
意地悪な人が、私のロッカーからリュックを摑み出す。ズルズルズル。
しまってあったペットボトルのお茶をとってくれた。
お礼を言う間もなく、というか聞く気もなく、さっさと帰っていく。
わかる。その気持ちもわかってしまう。
自分よりずっと若い女の子が弱々しくしている時。
大騒ぎしてないで、出来ることをとっととしなよほらほら、と私もやりたくなる。
自分が悪いんでしょ?
あの人は言っちゃうけど、私は言わない。それだけだなぁと思った。
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