【昔ながらの銭湯に行ってみた・その4】常連の輪の中で、ひとり心細くなる
- kinako152 .
- 2016年8月26日
- 読了時間: 2分

おそらく、そういう時間帯だったのだと思う。
まだ空が明るいうちに、銭湯に来てしまった。
会社帰りのサラリーマンも、学生も、親子連れもいない。
風呂なしアパートに住んでいそうな、バンドマンも劇団員も。
せめて18時を過ぎないと、お風呂には来ないのだろう。
孫や血圧の話で挨拶を交わす世代に囲まれて、私は入浴していた。
きっとこれが、この時間帯の決まった面々なのだ。
ここでしか会わないけど毎日会っている、という連帯感。
じっと窓を見ながら、お湯につかった。
銭湯で人見知りするなんて、今日まで考えてもみなかったことだ。
あいかわらず、じろじろと視線を感じるせいでもある。
どんなに遠くのスーパー銭湯に行っても、こんなに心細くなったことはない。
「今夜は降らないみたいよ」
ふいに話しかけられた。さっきまで、育毛剤を頭にペタペタしていた人だ。
人付き合いに疲れてここに来たはずなのに、話しかけてもらえてすごく嬉しい。
私は、なるべく気の抜けた声で「洗濯物が濡れなくて助かるなぁ」と返した。
喜んだら初心者っぽい気がする。
その人はすぐに湯から上がって、今度はムダ毛を剃りはじめた。
《カミソリは持ち歩いて》という貼り紙があったので、違反ではないのだろう。
空は、ちょっと曇ってきていた。
そこに突き出た煙突の珍しさに感動しながら、でも降りそうだよなぁ、と思った。
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